おはようございます。maisanaです。
まずは、この記事に来られた方の「初めて学術論文の投稿をしよう」という気持ちを称賛したいと思います。
素晴らしい!!
そんな志高い人であったり、教授に勧められてやってみることにした人であったり、やれって言われてやらざるを得なくなった人であったりと理由はいろいろだと思います。
それでも学術論文を書くことは素晴らしいのです。
掲載された論文が読まれるということは社会貢献です。
世の中が良くなるための研究をする者の役に立つということは、立派な社会貢献です。
私もいちおう博士号を持っている研究者ですので、いくつかの学術論文をジャーナルに投稿しています。
私の経験がお役に立てればと思い、学術論文の投稿から掲載までの手順をご説明したいと思います。
ちなみに化学系で、無機材料開発の研究ですので、他の分野の場合は少々異なる部分があるかもしれません。
自分の研究内容を論文の形にしてみる
やっぱり、まずは研究内容(ストーリー)が大事です。
背景から結論までがまとまりになっていなくてはなりません。
もし相談できる方がいれば、「こんな研究内容なんですが、論文に投稿するのに十分ですかね~?」なんて聞いてみるのが一番良いです。
それでは、まずざっくりストーリーを書いてみましょう。
背景
世の中にはこんな課題があります。他の研究ではこんなやり方をしています。私の研究ではこんな新規なアプローチを試みます。
実験方法
ここでは淡々と丁寧に説明をします。試薬、分析装置などは型番やメーカーも示しましょう。
結果・考察
もっとも大切なところです。結果は淡々と、考察では結果から導かれることと著者の推測を混同しないように気を付けましょう。
結論
「これらの実験とその結果からこんなことがわかりました。」ということを簡潔にまとめます。
参考文献
参考にした論文や影響を受けた論文を掲載します。参考にさせて頂いた研究論文には敬意を払いましょう。
ジャーナルを選ぶ
論文を書き始める前に、先にジャーナルを選ぶ方が良いです。
図やグラフを入れたりした後で、フォーマットを変えるのは一苦労することがあります。
参考文献もジャーナルごとのそれぞれの書き方があります。
どのジャーナルが良いのかわからない場合は周りの方に聞いてしまいましょう。
独自で探す場合は、参考文献と同じ雑誌や、Google Scholarでキーワード検索したりして類似の論文が投稿されている雑誌としてしまっても、投稿先として大きく外れることはないと思います。
意外とジャーナルを選ぶときに気にした方が良いことは、いつ頃の掲載にしたいかということです。
投稿から掲載までの期間はジャーナルによって異なります。
それは論文を評価してくださる査読者の査読期間をどれくらい設けているかが違うからです。
例えば、3か月後には掲載させたいのか半年後でも良いのかによって、投稿するジャーナルが左右されるかもしれません。
LetterとFull Paperとは?
ショートペーパーとフルペーパーとも言います。
簡単に言ってしまうと、その呼び名の通り、短い論文か長い論文かの違いです。
Letterは、新しい発見をいち早く公表したいときに選びます。
掲載までの期間が比較的短いです。
研究はライバルとの競争です。先に公表した方が勝ちですので。
Full Paperは、一般的な読み応えのある論文です。
Letterで掲載された内容に、さらに肉付けして投稿することもありです。
内容、文量とも自信がない方はLetterの方が良いと思います。
2~4つくらいの実験結果、分析結果で投稿することができますので、まずはこちらで試してみましょう。
インパクトファクターって何?
ジャーナルを選ぶにあたってインパクトファクター(IF)という数値に出会うかもしれません。
ジャーナルの影響度の指標として用いられています。
詳しいことはWikipediaで調べてください。
数値が大きいほど掲載の難易度が高いジャーナルと思ってもらって良いと思います。
論文を書く
いざ、執筆!!
書いて。書いて。書きます。
ざっくりな文量ですが、Letterは2~3ページ、Full Paperは5ページ以上って感じですね。
文量については投稿規定を読みましょう。
私は文章がへたくそですので、まずはとにかく書いてしまいます。
「てにおは」が間違っているとか、前後の文が繋がっていないとか、同じことを2、3度書いてあるとか気にしません。
手が進むときはその手に任せて書いてしまいます。
翌日、再度読んでみて修正していきましょう。
自ら校正することを何度も何度もやることでどんどん良い論文になります。
ですので、論文の執筆は時間をかけることも必要ですが、日数をかけることをオススメします。
投稿する
次は投稿です。
投稿そのものは大変ではありません。
送るだけです。
メールで送るのであったり、投稿フォームのサイトにアップロードするジャーナルもあります。
投稿規定をよく読んでから投稿しましょう。
編集者の方にお手数かけてしまってはいけませんので。
投稿する論文を見てもらえる方が周りにいる場合は、事前に見てもらいましょう。
学会会員になる必要性
投稿するジャーナルによっては投稿者または共著者が学会の会員であることが必要な場合があります。
共著者に確認しましょう。
またはもう一度投稿する可能性があるようならば学会会員になりましょう。
査読される
学術論文の掲載を目指すことにおいて、査読が最重要なステップです。
査読者から査読意見が頂けたら、基本的には2つの書類を作成します。
「査読意見への回答」と「修正した論文」です。
結構つらいことやくじけそうなことがあるかもしれません。
大事なことはめげないことです。
せっかく苦労して、時間をかけて書いた論文です。
もう一息、気合で乗り切りましょう!!
査読って何?
そもそも査読の意味がわからないよーって方もいるかもしれませんね。
論文を読んで誤りが有るか無いか、掲載に適しているかを判断することです。
ジャーナルの編集者が関係分野の研究者にお願いして、査読してもらうのです。
査読者はどこぞの教授と思って頂ければ間違いないです
査読の期間
査読意見が返ってくるまでの期間はジャーナルによって様々です。
2週間のところもあれば2か月くらいかかるところもあります。
前にも書きましたが、掲載時期を気にする方は査読期間も注意しましょう。
査読の結果
大抵は4段階評価だと思います。
1 受理:論文がそのまま掲載されます。アクセプトと言われます。
2 minor revision:ちょっとした修正だけしてねー。
3 major revision:大幅に修正したら掲載していいかもよ。
4 拒否: 内容を考え直してね。このままでは掲載されないよ。
たいていは2か3だと思います。(1ってことあるんですかねw)
頑張れば掲載されるということです。
査読意見のように、かしこまった文章で指摘されるとだいぶショックを受けます。
でも、査読者は悪く言うつもりはないはずです。
少なくとも私が査読者の場合はそうです。
査読意見への回答
大事なことなのでもう一度言います。
査読意見にめげないこと!!
査読意見が届いたら回答を作成していきます。
もし編集者から指示があればその通りに作ってください。
とくに指示がない場合は、Q&A方式でwordを使って書いていけばよいと思います。
例
査読意見1-1 AとBはどんな相関があるのでしょうか。
回答 ご指摘のとおりです。説明が不足しておりました。我々は○○から××と考えおります。したがって”~~~”と追記いたしました。
まず査読意見を受け入れて、反論するところは反論する。修正するところは修正していきましょう。
すべての意見に回答しましょう。無回答はダメです。
たいてい回答の期限は1か月くらいです。
追加実験が必要な場合は厳しい期間設定だと思います。
理由が正当であれば期間の延長もできるのかもしれないので、時間が足りない場合は編集者に相談してみましょう。
(私はやったことがありません。お力になれず。)
論文の修正
査読意見への回答を踏まえて論文も修正していきます。
こちらも編集者から指示があればその通りにしてください。
wordの校閲機能を使って、追記したり、見え消ししたりが多いかなと思います。
編集者とのやり取り
査読意見への回答と修正した論文を編集者に返送します。
編集者さんが再度査読者とやり取りをしてくれて最終決定を下します。
ハラハラドキドキします。
場合によっては、もう一度査読意見が来たりします。
掲載
査読者からGOが出たら掲載決定です!
おめでとうございます!!
アクセプトされたら、編集者さんが論文の体裁を整えてくれます。
普段読んでいるフォーマットで自分の論文が形を成すと嬉しくなります。
問題なければ、いざ掲載です。
その後、投稿料や別刷りの購入の支払いをします。
オープンアクセスとは?
最近では、無料で論文を公開することが多くなってきました。
ネット上ですぐにPDFで落とせる論文とそうでない論文がありますよね?
無料で読めるようにして、たくさんの人に読んでもらいたいということです。
自分の論文が引用される可能性を高めることになります。
論文を引用してもらうとインパクトファクターが上がるので、ジャーナルとしても嬉しいことなのです。
ただ、オープンアクセスにするためには投稿料+αの料金を支払ったりすることがあります。
あとがき
いかがだったでしょうか。
追記してほしいところとかあればコメント頂けると助かります。
掲載されるか自信がなくても投稿しましょう。
初めての論文投稿はチャレンジです。
ワンチャンスのことではありませんし。
査読意見をもらうことは、専門家に意見を貰っているということです。
これで閃くことがあるかもしれません。
私は1つ目の学術論文のときには国内ジャーナルに日本語で投稿しました。
それでも大変でした。
海外ジャーナルに投稿したのは3つ目くらいでしたね。
少し慣れてきたとはいえ、だいぶ大変だった記憶があります。
皆さんの【初めて】に少しでもお力になれたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。